地中熱に関する研究をされている研究者の方々へのインタビュー企画の第二弾です。
今回は、(独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門地下水研究グループ 内田 洋平 主任研究員にお話を伺いました!
(聞き手:地中熱利用促進協会ホームページWG)
国内外,海外は東・東南アジア地域における広域の地下水流動系の解析です。ここで言う「広域」とは平野や盆地単位の広さです。
Q2.地下の温度はどうやって測るのでしょうか?
300mのケープルにサーミスタセンサ(分解能0.01度)を取り付けた温度計を使って,水位観測用の井戸で温度を測定します。観測井は,ポンプ等で地下水を汲み上げていないため,井戸周辺の地層の温度と平衡状態になっています。つまり,井戸内の鉛直温度プロファイルを複数本集めることにより,流域内の3次元地下温度構造がわかることになります。
Q3.これまでどういった所で地下の温度を測定されたのですか?
国内では,北海道・石狩平野,秋田平野,仙台平野,山形盆地,関東平野,濃尾平野,福井平野,筑紫平野などです。海外では,タイ・チャオプラヤ平野,ベトナム・ホン河デルタ,中国・黄河流域,韓国・沿岸域です。
Q4.もともと地下温度の研究をなさってきたのですか?
学生時代から,地下温度構造から広域地下水流動系を逆解析する研究を行っていました。多くの水文研究者は水質化学が専門ですが,私の場合は,地球物理学から水文の研究へアプローチしていました。
Q5.地中熱利用研究を始められたきっかけについて教えてください?
大学院を修了し,地質調査所(現:産総研・地質調査総合センター)・地下水研究課に配属されたときに,地殻熱部の研究会に呼ばれて,地下温度構造の話をしたことがきっかけです。当時の地殻熱部長は,促進協会理事長の笹田さんでした。それから,大谷先生(現:岐阜大学),産総研の安川さん,天満さんの4名で地中熱のプロジェクトを立ち上げ,NEDOの予算獲得につながりました。
Q6.今後はどのような研究が必要になってくると考えていらっしゃいますか?
日本の場合,地中熱源となる地質は,ヨーロッパやアメリカとは大きく性質が異なるので,日本独自の地中熱システム設計や運転管理が必要です。それを踏まえて,地中熱利用を念頭に置いた地質データベースやポテンシャルマップの研究・開発が必要だと思います。
Q7.一方、研究者の立場から地中熱利用の促進に向けて産業界への期待などがございましたらお聞かせ願えないでしょうか。
日本への普及を考えた場合は,システムとしてのハードルはそれほど高いとは思いません。太陽パネルと比較して,見た目は(地中に埋設するため)地味なシステムですので,とにかく宣伝が必要ではないでしょうか。その次は,初期コスト,特に熱交換井掘削の低減だと思います。
Q8.日々の研究活動もお忙しいこととお察しします。休日などは何をされているのですか?
宝物のバイク(1980年代のカワサキ・空冷2バルブエンジン)と愛車の整備をしています。連休の時は,奥多摩へツーリングやハイキングに出かけます。もともと,登山が趣味で,大学は理学部地学科を選びましたので。
Q9.将来、地中熱の研究をしてみたいという高校生や大学生にアドバイスがありましたらお願いします。
地中熱のハード部分の研究でしたら,物作りですので,日頃から機械の修理や工作などを通じて,メカに強くなる必要があるでしょう。私のように,地下の熱構造や地下水流動の研究でしたら,地球科学関連の本を読んだり,実際に山を歩いたりして,地形や地質の観察をするのが良いかもしれません。
本日は大変貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。