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Geo-Heat Promotion Association of Japan

協会からの提言

『再生可能エネルギー熱利用の促進を』
―エネルギー基本計画の見直しに向けての提言―

エネルギー基本計画の見直しに向けて、2018年2月9日、下記の意見を経済産業省資源エネルギー庁の「エネルギー政策に関する意見箱」に投書いたしました。

 

NPO法人地中熱利用促進協会
理事長 笹田政克

 

エネルギー基本計画の見直しにあたり、再生可能エネルギーの熱利用促進の視点から2つ意見を述べさせていただきます。
1)省エネと再生可能エネルギー熱利用について
2017年8月9日の基本政策分科会で坂根分科会長が省エネと熱利用について以下のご発言をされています。「まずは省エネがかなり可能性があるんじゃないかなと思っております。私どもの会社の工場で電力9割減が実現できた話は以前したかと思いますが、結局これは冷暖房への地下水利用を取り入れたうえに、さらにバイオマス発電を導入し、それだけですと2割の効率しか改善しませんから、そこからさらに熱利用すると7割まで上がるというので、小規模のバイオマス発電とその熱利用を幾つもやってきました。とにかく一番省エネが大事な話ですから、省エネをもっと進めるためにどうしたらいいのかよく検討する必要があります。」*1 この内容はMETI Journal 2018年01月31日エネルギーVol.10にも紹介されています。
ご発言の中にある「冷暖房への地下水利用」は、地中熱利用の一形態で、経済産業省の再生可能エネルギー熱利用政策の中では、地中熱利用のオープンループに区分されているものです。(株)小松製作所の工場では、再生可能エネルギーの熱利用として、地中熱とバイオマスが活用されていますが、これに太陽熱等を含めて考えると、再エネ熱利用は事業者による省エネの取組にまだ大きな可能性を残しています。かつてNEDOが「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業」という省エネ事業を実施した際に、3年間のエネルギー使用量の報告が義務付けられ、87施設のデータから地中熱、太陽熱等の再エネ熱利用システムが、省エネ率で上位を占めるという実証結果が報告されています。現在、再生可能エネルギーは発電にばかり目が向いており、大きな効果のある熱利用が見過ごされがちな状況にあります。この度の見直しにおいて、坂根分科会長のご意見を単に省エネということだけでなく、省エネの中でも効果が大きい再生可能エネルギー熱利用に注目し、工場はもとよりZEH、ZEB等住宅・建築物への導入をもっと促進するという視点から議論を進めていただけますようお願いいたします。

2)エネルギーミックスでの地中熱の導入量の記載について
2015年に公表された政府による2030年エネルギーミックスでは、再生可能エネルギー全体として原油換算で6700万kLの利用が見込まれています。また、パリ協定のもとでわが国では2030年までに2013年度比で26%の温室効果ガスの削減を約束しています。地中熱利用がこれらの目標にどの程度貢献できるものか、地中熱利用促進協会では先行する世界各国の地中熱の導入状況と日本の地中熱のポテンシャルを考慮し、2030年代に実現可能な地中熱ヒートポンプの導入量を算定するとともに、それを実現するために必要なプロセスを示す中長期ロードマップを作成致しました(下図)。
このロードマップでは2030年代の地中熱の導入目標として、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギー熱利用の導入見込み量1341万kLの10%に相当する134万kLを掲げています(下図緑枠)。これにより年間100万tのCO2の削減が可能となります。これを実現するために必要な地中熱ヒートポンプの設備容量はおよそ1000万kWとなり、設置件数に換算すると16万件となります。地中熱のポテンシャルは日本エネルギー経済研究所の推計によると、全国に600万~1600万kLあるといわれていますので、導入目標としている134万kLを十分賄える量であるといえます。また、設備容量の1000万kWという数字も、2015年時点で地中熱利用分野で先行する米国が1680万kW、中国が1178万kWの設備容量を有していると報告されていることから、取組方次第で実現可能なものとなります。
この度見直しが行われるエネルギーミックスにおいては、太陽熱55万kL、バイオマス等618万kLに併記する形で、地中熱134万kLを記載していただきたく、ご検討をお願い致します。

*1: 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 (第21回会合)議事録 42ページ