東京都では予算編成に際し各種団体からヒアリングを実施しています。
当協会では2023年11月21日に、令和6年度予算編成にあたってのヒアリングを受け、要望書を提出いたしました。
また、要望書に対する回答が、2024年1月末にありました。
地中熱利用促進協会『要望書』 | ・テキストで見る ・PDFで見る |
提出した要望書に対する 東京都からの回答 |
・回答はこちら ・PDFで見る |
各種団体等からの東京都予算に対するヒアリングの実施について:
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/06dantaiyobo_index.html
※「第7回」(令和5年11月21日)に、協会の要望書とヒアリングでの発言が掲載されています。
【公式】東京都財務局チャンネル:ヒアリングの様子を動画にて確認いただけます。
https://www.youtube.com/channel/UCdhUxPOEZKYd0iJ3xMtYzBw
※地中熱利用促進協会ヒアリングは、第7回(11月21日(火)13:30~15:00)の55分45以降です。
【報道発表資料】令和6年度東京都予算案の概要:
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/01/26/17.html
2023年11月21日 東京都知事 小池 百合子 様 特定非営利活動法人地中熱利用促進協会
要 望 書 脱炭素社会の実現に向けて有効な地中熱利用システムの普及に関して東京都にご協力をいただき、ともに活動を進めることができれば、多くの課題が解決できるものと考えております。ここでは普及課題として、1.地中熱の広報の強化、2.地下水の規制緩和、3.再エネ熱の義務化、4.第5世代地域熱供給の4つについて要望をいたします。
1.地中熱の広報の強化 地中熱は省エネ効果とCO2削減効果などで大きなメリットがあり、東京都でも実績が増えてきているが、普及が十分に進んでいるとは言えない。その要因は認知度が低いことと初期コストが高いことにある。東京都の助成制度は導入コストの削減で大きな効果があるが、現状で見ると都内での地中熱ヒートポンプの導入実績は177件にとどまっている。認知度向上が課題であり、協会でも展示会などで様々な活動を行っているところであるが、東京都には広報活動の強化でご協力をお願いしたい。 5年くらい前になるが、設計事務所を対象にしたセミナーと子供たちを対象にした普及イベント(サイエンスショー)を都と共催、連携し、多くの参加者があった。この時セミナーに参加した建築関係者とはその後も交流が続いており一定の効果はあったものの、これらは単発ものであったため、効果は限定的なもので終わっている。 導入に関係する事業者を対象にしたセミナーは有効であるので、協会とも連携しながら、建築関係の業界団体等に働きかけを行うとともに、設計事務所に加え、ディベロッパー、エネルギーサービス事業者、環境意識の高い企業の環境担当者等を対象にしたセミナーを継続的に実施していただきたい。 一方、一般への認知度向上には別の視点からの取組が必要であり、地中熱に注目の集まるようなイベントの企画や展示会でのアピール効果の高い発信、インパクトのあるキャッチコピー(たとえば、Cool Heatなど)を用いた広報などを組合せた効果的なキャンペーンを実施し、都民の認知度向上を図っていただきたい。なお、住宅・建築物関係での地中熱の広報においては、供給サイドの事業者のみならず、需要サイドの居住者や子供の認知度を向上させることも重要で、居住者には戸建住宅の空調用熱としての輻射式冷暖房のメリットを理解すること、小中学生には避難所となっている学校等のリニューアル時の設備更新での地中熱システムの設置などが考えられる。
2.地下水の規制緩和 東京都では1960年代まで地下水の過剰な汲み上げによる地盤沈下があり、その対策として国が工業用水法、ビル用水法で規制を行うとともに、都は条例により揚水規制を実施している。現在東京都では厳しい環境確保条例により、新規の地下水利用は大きく制限されている。 地下水と熱交換を行う地中熱利用(オープンループ)は、地中熱交換器を用いた地中熱利用(クローズドループ)に比べ規模の大きな施設での利用に適しており、CO2削減に大きく貢献できる。オープンループは揚水規制のない地域では効果的な地球温暖化対策となるため近年普及が進んできているが、残念ながら揚水規制の厳しい東京都ではまったく導入ができない状況が続いている。 地盤沈下防止という視点からは、近年技術開発が進んできた汲み上げた地下水の全量を同じ帯水層に戻す帯水層蓄熱という手法を適用すれば、地下水を一切地上に排水しないため地盤沈下の心配なく大量の地中熱が利用できる。この手法については環境省の技術開発事業で地盤沈下を起こさないことが既に実証されており、さらに地下水観測による水位低下防止策を用いることでより確実な方法といえる。 東京都のような都市化が高度に進んだ地域では、利用できる再生可能エネルギーは限られているが、その中で地中熱には大きなポテンシャルがある。東京都のエネルギー消費量は業務・家庭部門合わせて431PJ(2018年)であるが、環境省のデータによるとクローズドループによる試算ではあるが、東京都の地中熱導入ポテンシャルは71PJある。地中熱利用でも比較的規模の大きな施設で利用できる帯水層蓄熱など新しい技術で、地下水が持続的に利用できるようになると、脱炭素社会の実現に向けて大きなCO2削減効果が期待できる。実証事業を含め地下水、地盤環境の保全と両立できる新しい技術を導入することにより地球温暖化対策に大きく貢献できるよう、地下水規制にかかる政策の転換をお願いしたい。 なお、上述した規制緩和の課題から離れるが、地下水に関連して以下の点についても検討していただきたい。地下水流速の速い場所ではクローズドループの方式でも、熱の移流を利用した効率的な熱交換ができる。最近この目的に特化した地下水移流型熱交換器も開発されている。今後は、計画地点の地質・地下水環境に最適な熱交換方式を選択することが重要である。これに関連して、東京都が公表している東京地中熱ポテンシャルマップは、「見かけの有効熱伝導率」が表示されているので、地質図と併せて見ることにより、地下水の影響が大きい場所が推定できる。東京地中熱ポテンシャルマップの中に、地下水による熱の移流と熱交換方式も含めた説明を加え、地中熱がより効率的に利用できるように検討していただきたい。
3.再エネ熱の義務化 東京都の業務・家庭部門でのエネルギー消費の大半が最終的に熱として使用されている現状を考えると、脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギーの導入においては、発電とともに熱利用に重点を置く政策が必要である。 市場規模の小さい地中熱などの再エネ熱の普及拡大には、政策による市場の創出が大きな役割を果たす。一定規模以上の需要が創出されれば事業者の新規参入を促し、導入コストの低減につながる好循環のスパイラルにはいることが期待できる。 東京都はすでに太陽光の導入義務化の政策を新築の戸建て住宅を対象に実施しているが、地中熱などの再エネ熱についても適切な形での導入義務化を実現し、市場の創出に繋げていただきたい。導入義務化の検討にあたっては、新築の戸建住宅のみならず、建築物(公共建築物・一定規模以上の民間建築物)も対象にしていただきたい。東京都の公共建築物においては、省エネ・再エネ東京仕様の中で、それぞれの再エネについて個別に導入の仕方が記載されているが、地中熱などの再エネ熱は優先度が低い位置づけとなっている。この状況を改善し再エネ熱については施設の特性に応じて導入義務化を進めていただきたい(具体的には熱需要の大きな施設に注目して、地中熱は病院・福祉関係施設で「原則導入」に、太陽熱は「原則導入」に福祉関係施設を追加し、さらに地中熱では庁舎(中央熱源式)のベース熱源を担う熱源機として「原則導入」を検討していただきたい)。一定規模以上の民間建築物(新築・増築・改築)においても、環境確保条例により再エネ熱導入について適切な形での義務化を進めていただきたい。
4.第5世代地域熱供給 欧州では地中熱などの再エネ熱や建物からの排熱などを使った第5世代地域熱供給が進展している。欧州における地域熱供給世代区分では、世代が進むにつれて温熱の供給温度が低くなっており、第5世代では常温に近い熱源水ネットワークを用いる高効率のシステムとなっている。第5世代地域熱供給では地中熱(クローズドループとオープンループ)が多く利用されており、地中の蓄熱機能を活用しているのも大きな特徴の一つである。また、欧州では新設だけでなく既存の建物への熱供給システムを第5世代地域熱供給に置き換えている事例も見られる。 東京都においては地域冷暖房の分野でこれまで多くの取組がなされており、大量かつ高密度なエネルギー需要をもつ都市開発において、太陽エネルギーの活用や効率的なエネルギー供給により環境への負荷低減、CO2削減の推進をはかることを政策の基本においている。これをさらに発展させ脱炭素を実現させるには、再エネ電気とともに地中熱などの再エネ熱と排熱などの未利用熱を大量に利用することが必要である。 東京都では90区域で地域熱供給事業を始めとした熱の面的融通の事業が実施されている。地域熱供給事業のうち再エネ熱は8地区(地中熱2(クローズドループ1と地下トンネル水1)、下水熱3,太陽熱2、河川熱1)で、排熱利用は4地区で利用されている。このうち変電所の排熱を利用した地区では熱源水ネットワークが稼働している。これらの先導的な事例を踏まえ、将来においては再エネ熱と排熱を活用した第5世代地域熱供給事業の展開により、脱炭素社会の実現を目指す積極的な施策を実施していただきたい。
以 上 |
東京都回答書: